高齢層や深夜勤務者の多い現場で、
きめ細やかな健康管理体制の構築が急務でした人事部 部長代理兼人事課長 福手 浄 様
人事部のミッションと、感じておられた健康管理上の課題感についてお聞かせください。
(福手様) 私たち人事部人事課では、従業員の労務管理全般や給与計算等を担うとともに、全社を統括する安全衛生に関する取り組みを発信しています。ミッションは「従業員が健康でやりがいを持って長く働ける環境をつくること」です。
社員構成として、清掃従事者が全体の半数以上を占めているということもあり、現場で働く従業員には高齢者も多く、血圧が高い等、何らかの健康リスクを抱えている方が多くいらっしゃるという実情がありました。したがって、きめ細やかな健康管理体制を構築することが急務だったのです。
(山本様) 弊社の特徴であり、健康管理上課題となっているのが、勤務形態と従業員の年齢層です。従業員数は約4,000名に上り、約半数にあたる2,000名ほどが深夜勤務に従事しています。深夜勤務者は法律により年2回の健康診断受診が義務付けられているため、会社に届く健康診断結果は相当な量に上ります。以前はこれらをすべて紙で管理していました。
緊急を要するケースでも、紙の不便さを痛感しました。従業員が現場で急な体調不良に見舞われ救急車で運ばれた場合、我々はすぐに直近の健康診断結果を確認して状態を把握する必要があります。しかし、保管庫にある膨大な量の紙からたった一人の情報を探し出すのは至難の業です。
(福手様) 業務効率化の観点だけでなく、リスクマネジメントの観点からも、「システム化しなければならない」という危機感を強く抱いていました。健康管理に携わる担当者は2名と少数で、委託している産業医や保健師の来社も月数回という限られた体制です。高齢者や深夜勤務者が多いリスクの高い現場を支援していくには、専門家が不在の瞬間でも即座に正しいデータが引き出せるデジタル基盤が欠かせません。
少人数の担当者で4,000名の健康を支え切るためのインフラとして導入したのが、Health Data Bankでした。
Health Data Bankで、人事を介さない健診データ連携と
判定基準の統一を実現できました人事部人事課 アドミニストレーションスタッフ 山本 孝治朗 様
膨大なデータと現場のリスクを管理するうえで、Health Data Bankは運用基盤としてどのように機能しているのでしょうか。
(山本様)導入を開始したのは2024年12月です。各医療機関との間でデータ連携のためのフォーマット調整やコード作成などを行い、2025年夏には全社展開へとステップを踏むことができました。
非常に気に入っているのが、人事部を介さずに、直接Health Data Bankへ健診データを取り込める点です。多くのシステムでは人事がデータを受け取り、フォーマットを変換してアップロードする手間が発生しますが、Health Data Bankでは健診機関から直接データが届くため、我々が間に入る必要がありません。
受診者マスタの更新より先に健診結果が届いてしまうケースでも、未登録の従業員の健診結果としてエラー通知を自動で出してくれる仕組みがあり、データの正確性を担保するうえで非常に心強いです。
さらに大きなメリットとなっているのが、判定基準の統一によるブレの抑制です。産業医は非常勤のため、当社の将来的な人員増や産業医の交代によって判定結果に微妙なブレが生じることは大きなリスクでした。しかしHealth Data Bankでは、人間ドック学会基準に基づいた統一の判定基準をシステム上に設定でき、公平かつ客観的な一括判定が可能になりました。
このデジタル化による成果は、単なる事務作業の短縮にとどまりません。以前は判定業務そのものに多大な時間を費やしていましたが、業務が効率化されたことで、産業医が高リスク者と向き合う面談時間を大幅に増やすことができました。現在は、月1回のオンライン面談に加え、週2回の来社面談を組み合わせ、対応枠を計3回へ拡充しています。
人事・産業医・保健師が連携しやすいよう、
役割に応じた情報の抽出整理にこだわりました人事部人事課 アドミニストレーションスタッフ 山本 孝治朗 様
判定基準が統一され、対象者が可視化されたのですね。現場従業員への継続的なフォローにはどのような変化がありましたか。
(福手様) リスクが可視化されたことで、健診結果に課題のある多くの従業員を短時間で抽出し、効率的に直接指導できるようになった意義は大きいですね。高齢にもかかわらず自発的に受診していない方に対しても、保健師から将来のリスクを丁寧に説明し、受診行動を促せるようになりました。
面談の質も向上しました。以前は、過去にどのような指導を受けていたのかを紙の記録から見返さなければ分かりませんでしたが、Health Data Bankでは面談記録が蓄積されていくため、継続的な課題が一目で把握できます。対象者の過去の面談履歴や健康状態の推移もシステム上で閲覧でき、紙の診断書なども文書データとして個人記録に紐づけて一元管理できるようになりました。
(山本様) 加えて、人事・産業医・保健師という異なる役割を持つプロフェッショナルが、互いに専門性を尊重しながらスムーズに連携するための「情報の抽出整理」にもこだわっています。
導入時には産業医から、「医療職が行った面談の詳細な内容を、すべて人事に共有することは適切ではない」という助言がありました。これを受け、医療職が入力する詳細な「面談記録」と、人事が労務管理として確認すべき「記録簿」の閲覧範囲を明確に分離しました。Health Data Bankの柔軟な権限管理機能があったからこそ実現できた運用です。
その結果、産業医や保健師は秘匿性の高い医療情報を安心して記録できる一方、人事部は就業判定や措置に必要な情報のみにフォーカスして迷いなく運用を回せるようになりました。日々の調査対応でも紙のファイルを机上に広げる必要がなくなり、物理的な漏洩リスクからも解放されています。
システムを活用し、2次検診の受診率向上をはじめとする
健康経営の取り組みを強化したいです人事部 部長代理兼人事課長 福手 浄 様
最後に、Health Data Bankを活用した今後の健康経営に向けた展望をお聞かせください。
(福手様)システム化によって産業医面談の効率化と省力化が実現できました。今後は、そこからいかに具体的な改善行動につなげるかが重要だと考えています。
中長期的には、「ホワイト500」の認定取得を見据えています。そのために避けて通れないのが、再検査となった従業員の二次検診の受診率向上と確実なフォローです。現在行っている受診勧奨に加え、実際の受診結果までをシステムで一元管理し、追跡していくフローを確立したいと考えています。
(山本様) 全従業員へのシステム浸透も今後強化していきたい点です。まずは社内でPCを保有している層に向けて利用ガイドを作成・周知し、段階的に個人機能の活用を広げていきたいですね。セルフチェック機能などを通じて、従業員一人ひとりが自律的に健康管理を行える土壌を育てていきたいと考えています。
(福手様) 会社としても、健康経営の取り組みを強力に推し進めるため、人事部内に新しい課となるD&I推進課を新設しました。人事課と共に従業員の健康意識を高める施策を、今後さらにダイナミックに展開していきたいですね。
本日はご多忙の中、貴重なお話をありがとうございました。紙ベースでの煩雑な作業からの脱却による業務効率の向上、学会基準に基づく就業判定の標準化、そして安全な情報共有。Health Data Bankが、高齢化や深夜勤務といった現場特有のリスクに向き合う実務を支え、人事部や医療専門職の連携基盤として機能していることがよく分かりました。今後の2次検診フォローや健康経営の推進にも、着実につながっていくことが期待されます。