“100%受診”をやり抜く組織を支える実務基盤
健診データの標準化と多職種連携で叶える、フォローアップの高度化

“100%受診”をやり抜く組織を支える実務基盤
健診データの標準化と多職種連携で叶える、フォローアップの高度化

三井不動産株式会社

人事部 部長補佐 河本信利 様
健康管理センター 保健師 中尾素子 様
健康管理センター 保健師 玉井沙織 様

業種
不動産業
従業員数
1,928名(2025年3月31日現在)

数千人規模の従業員の健康状態を把握し、一人ひとりに的確なフォローを届けるのは並大抵のことではありません。長年にわたり「健診受診率100%」を維持する三井不動産株式会社でも、かつては医療機関ごとに異なるデータの読み替えなど、紙ベースの膨大な手作業が発生し、カオスな状況に直面していました。

同社は2019年に「Health Data Bank」を導入し、この限界から脱却。以来、業務時間を10分の1にまで短縮し、盤石な体制を定着させています。デジタル化を機に、同社の健康経営はどう進化を遂げたのか。人事部の河本信利部長補佐、健康管理センターの中尾素子保健師、玉井沙織保健師にお話を伺いました。

一番のストレスであり、膨大な時間を奪われていたのが、
データの読み替えルールの統一作業でした

健康管理センター 保健師 中尾素子 様

三井不動産様が掲げる健康管理のミッションと、直面していた運用課題についてお聞かせください。

(河本様)人事部の管掌範囲は、従業員の健康管理全般や復職支援など多岐にわたり、健康管理センターのメンバーと密接に連携をとりながら業務を進めています。重視しているもののひとつが、年に1回の健康診断における「受診率100%」の維持です。弊社では、正社員・契約社員等を含む健康診断の対象者に対して、長年にわたりこの目標を達成してきました。今後も、受診率100%の維持に取り組んでいきたいと考えています。

(中尾様)健康管理センターには、保健師が2名、事務担当が1名、常勤の内科産業医、非常勤の精神科医、心理士が在籍しています。しかし、全社員の健診を漏れなく受診につなげると、膨大かつ多様なデータが現場に集まります。私が入社した2015年当時は、紙ベースでの処理が中心で、まさに「カオス」な状況でした。

一番のストレスであり膨大な時間を奪われていたのが「データの読み替えルールの統一作業」です。社員は全国のさまざまな病院で受診してくるため、同じ検査項目でも名称が違ったり、単位がバラバラだったりします。そのため、保健師が紙で集まったすべての健診結果を目視で確認して単位の変換計算をしたり、社内ルールに合わせて赤ペンで修正したりする手作業が発生していました。この運用課題を解決し、従業員の健康への直接的なアプローチに時間を割く必要を痛感していたのです。

健康管理センター 保健師 中尾素子 様

操作性の良さによって業務にゆとりが生まれ、
幅広い層へのフォローに力を入れられるようになりました

健康管理センター 保健師 玉井沙織 様

Health Data Bankを導入した決め手や、導入してのご感想をお聞かせください。

(中尾様)複数のシステムを比較したのち、「保健師が最も使いやすいシステムを選んでください」という人事部の言葉が決定打となり、Health Data Bankの導入へと舵を切りました。

最大の効果は、懸念だったデータの読み替えルールが標準化されたことです。煩雑だった確認・修正作業がなくなり、ワンクリックで必要な集計データが出力できるようになりました。体感としては、手作業の10分の1程度にまで圧縮されたと感じています。

(玉井様)操作性の良さや一括処理機能によって業務に「ゆとり」が生まれたことで、以前よりも幅広い層へのフォローに力を入れられるようになったことが大きな変化です。

これまでは、産業医が決めた緊急度の高い方への対応で精一杯でしたが、今はもっと手前の段階の方々に対しても、私たちから積極的にアプローチできるようになりました。具体的には、産業医が判定した「レッド・イエロー・ブルー」の3段階の区分をもとに、対象者をシステム上でグループ化して管理しています。役割分担が明確になったことで、私たち保健師が主担当となる「ブルー(要観察)」の層の方々に対しても、漏れなく受診勧奨などの働きかけを行えるようになりました。

(中尾様)また、社員の行動にも変化が現れています。Health Data Bankのマイページに自発的にログインするケースが増えてきているのです。紙の健診結果を紛失してしまう社員も中にはいますが、マイページ上から自分でダウンロード・印刷できるので便利ですね。

健康管理センター 保健師 玉井沙織 様

Health Data Bankを使うことで、
産業医、精神科医、心理士と記録を共有できるようになり、連携がよりスムーズになりました

健康管理センター 保健師 中尾素子 様

就業判定や多職種間での連携面では、どのような変化がありましたか。

(中尾様)従業員の就業判定に関しては、弊社独自の就業管理区分をHealth Data Bankに設定し、フル活用しています。

以前は、就業について産業医の判断を仰いでも、表現のニュアンスに個人差があったりして、判断に迷う場面がありました。しかし今は、産業医がプルダウンメニューから「A:通常勤務」「B:フレックス勤務可・残業制限」「F:定時勤務・残業不可」といった、弊社独自の就業区分をワンクリックで選択できるようになりました。結果として、産業医の指示内容のブレが排除され、復職支援や配置転換の判断が非常にスムーズかつ正確に行えるようになっています。

また、これまでは面談記録をアナログで管理していたため、「誰が、いつ、どんな指導をしたか」が見えにくいという問題がありました。現在は産業医、精神科医、心理士など、チームの全メンバーがHealth Data Bank上でリアルタイムに面談記録を共有できるようになっています。

(玉井様)面談記録機能はよく使う機能なので、ストレスフリーに操作できる点には助かっています。前職で使用していた他社システムでは厳しい文字数制限があり、詳細な面談内容を泣く泣く削らなくてはいけないこともありました。Health Data Bankでは面談した社員の様子や保健師としての気づきを、ありのまま詳細に残すことができます。改行なども含めて自分の考えた通りに自由に入力できるのが良いですね。

昨年着任された産業医も、私たちが特別なマニュアルを用意したり操作方法をレクチャーしたりする必要はなく、直感的にシステムを使いこなされていました。

さらに、情報共有の安全性も飛躍的に向上しています。以前は再検査の案内などを通常のメールで行っていたのですが、個人の健康データを通常のメールで送受信することにはセキュリティ上の懸念がありました。そこで、システム内に備わっている「メッセージ機能」を全面的に活用する運用へと切り替えました。個人情報の取り扱いが圧倒的に安全になっています。

健康管理センター 保健師 中尾素子 様

蓄積されたデータを活用できるようになり、
健康経営を次の段階へ進めやすくなりました

人事部 部長補佐 河本信利 様

健康経営の視点から、Health Data Bankのご感想をお聞かせください。

(河本様)弊社は「健康経営優良法人2026(大規模法人部門、ホワイト500)」に10年連続で認定(2026年4月現在)されています。毎年の認定申請書類を作成する作業は大変でした。しかしHealth Data Bank導入後は、システムに蓄積された登録者データや健診データの出力機能を活用することで、「全従業員の高血圧の割合」「特定保健指導の実施率」といった必要な集計データを、効率的かつ正確に抽出できるようになっています。

今後の健康経営に向けて、どのような展望をお持ちでしょうか。

(河本様)今後見据えているのは、中長期的なメンタルヘルスの改善や仕事のパフォーマンス・生産性の向上です。とくに、時間外労働が多い社員への対応を今後さらに強化していきたいと考えています。

(玉井様)社員がいつでもHealth Data Bankにログインして、自分のストレス状態をセルフチェックできるような環境を作れたらと考えています。必要に応じて直接私たち保健師の面談に申し込めるような導線があると理想的です。予約機能などをうまく活用して、社員がより気軽に健康相談へアクセスできる仕組みを整えていきたいですね。

(中尾様)Health Data Bankには、長年にわたる正確で詳細な健康データが安全に蓄積されています。今後はこのデータを活かし、女性特有の健康課題の実態を抽出して産業医と共有するなど、より一歩踏み込んだ支援をしていきたいと考えています。社員が元気で長く働き続けられる環境づくりを、これからもめざしていきたいですね。

人事部 部長補佐 河本信利 様

本日は貴重なお話をありがとうございました。長年にわたり受診率100%を維持されている三井不動産様の強い信念と連携体制に、深く感銘を受けました。その真摯な健康経営を支えるパートナーとしてお役に立てていることを光栄に思います。皆様の「一人ひとりに寄り添うフォロー」をさらに後押しできるよう、私たちも現場の知恵に学び、進化を続けてまいります。