支援の分断を防ぎ、健保と事業主が伴走
20年のデータ蓄積が支える「コラボヘルス」の運営基盤

支援の分断を防ぎ、健保と事業主が伴走
20年のデータ蓄積が支える「コラボヘルス」の運営基盤

ワコール健康保険組合

事務長 西川 様
保健師 岡 様 / 黛 様 / 武田 様 / 木村 様 / 川崎 様 / 中村 様

業種
健康保険組合

約4,300名の社員を最前線で支えるワコール健康保険組合には、健保所属の保健師が産業保健と健康保険の双方の業務を担うという大きな特徴があります。

2004年から「Health Data Bank」を活用し、20年以上にわたって健康データを蓄積してきた同組合。外勤者の多さや異動の多さで支援が分断されやすい現場において、いかにしてフォローの抜け漏れを防ぎ、健保と事業主が伴走する体制をつくってきたのか。今回は、インタビューで語られた実務の知見をもとに、その運営の裏側を紹介します。

外勤者が多く異動も多い中で、
支援を途切れさせずにつないでいくことが大きな課題でした

ワコール健康保険組合様の独自の体制と、現場で直面しやすい健康支援の課題についてお聞かせください。

(西川様) 当健保は約4,300名規模の被保険者を抱え、その約9割が女性です。店舗で直接お客様とかかわる販売員をはじめ、全国の多拠点に外勤者が多く在籍しています。そのため、京都本社を中心とした西日本だけでなく、東日本にも保健師を配置し、広域をカバーする体制をとっています。

当健保最大の特徴は、事業主との「コラボヘルス体制」を共通基盤であるHealth Data Bank上で組織的に運用している点です。昭和48年の設立初期より長きにわたり、健保所属の保健師が産業保健業務も担う「ハイブリッド型」の体制を敷いています。 現在、東西の拠点に分かれた複数名の保健師が、健診フォロー、メンタルヘルス、特定保健指導などの保健事業の推進をはじめ、心身の健康相談や傷病者の対応、ヘルスリテラシーの向上にむけた教育や啓発といった専門領域を分担しています。システム上で情報を同期し、チームで業務にあたっているのです。これにより、健保と事業主が一体となった、従業員一人ひとりへのきめ細やかなサポートを実現しています。

(岡様) 会社と健康保険組合との距離が近く、連携がしっかりとれているのが特徴です。健保の保健師が事業主と協力して健康施策を一緒に進められる点は、大きな強みだと感じています。

(西川様) しかし、ここで課題となるのが被保険者の「働き方の多様性に合わせた支援の継続」です。母体企業ではライフステージに合わせた柔軟な働き方が用意されており、勤務地は多種多様です。ご家族の転勤に帯同されたり、店頭のスタッフから商品開発部門などの内勤スタッフへ異動を希望されたりといったケースが珍しくないのです。

社員番号ひとつで過去の経緯が開き、
誰でもアクセスできるのが大きな魅力です

ご異動やご転勤が多いのですね。そのような課題に対し、Health Data Bankは運用基盤としてどのように機能しているのでしょうか。

(黛様) 個人の履歴がひとつの基盤の中で積み上がっていき、どの保健師でもアクセスできるのが最大の魅力ですね。例えば、社員から健康相談を受けた際も、社員番号を入力して検索すれば、過去の対応履歴がパッと一覧で表示されます。電話で突然問い合わせを受けた場合でも、社員番号さえ分かれば過去の記録を迅速に確認でき、「前回こんな対応をしていたな」というのがすぐに分かるのです。

(西川様) グループ会社も含めて導入しており、誰がどこに異動しても健康情報の継続性を保ちながらシームレスにフォローできるのは、大きなメリットですね。また勤続年数の長い方が多いので、5年、10年、20年という時系列で健康状態の推移が把握できるのも利点です。

(岡様) リアルタイムに共有できる電子カルテのようなイメージで活用しています。保健師が東西に分かれていても、いつでも統一された対応ができます。

Health Data Bank上で定量・定性の情報が紐づき、
可視化されていることに大きな価値があります

長年のデータ蓄積と安全な運用設計は、貴組合ならではの「コラボヘルス」の実装にどう寄与しているでしょうか。

(岡様)過去のデータと現在を比較して分析ができる点は大きな価値です。20年以上使い続けてきたからこそ、日々の定性的な情報と定量的な情報の両方が、1つのツールの中で紐づき可視化されている。私たちが細やかな健康支援を推進できているのは、これまでの記録の蓄積あってこそだと感じています。

(西川様)コラボヘルスを推進していく中で、母体企業と健保が同じデータを見て同じ目線で健康施策に取り組むことはもちろん重要です。しかし、健康に関するデータはとても大切な個人情報。複数のベンダーに分散共有は避けたい、という気持ちはどの健保様にもあるのではないでしょうか。一か所でまとめて安全に管理・活用できるのが理想でしょう。その点、Health Data Bankは健保の法定業務と企業側の産業保健業務の両方を同一の基盤でカバーしてくれます。

(岡様)産業医に社員情報を共有する際も、社員番号のみを伝えて詳細はHealth Data Bank上で確認してもらえるのがありがたいですね。センシティブな個人情報をメール等でそのまま送るようなことは避けたいものです。誤送信などの情報漏洩リスクを排除し、高いセキュリティレベルを維持したまま、産業医・人事・保健師が密に連携できています。

「面談記録」を起点に、各機能を紐づけながら
健康管理のサイクルを回しています

実務において、HealthDataBankの多様な機能をどのように使い分けているのでしょうか。

(岡様)私たちの支援の核となるのは「面談記録」です。すべての支援記録をここに集約することで、東西の拠点間で担当者が離れていても、社員番号一つで「過去にどのような経緯があったか」を即座に共有できます。

(黛様)その面談記録に、より専門的な情報を紐づけていくのが「文書ファイル」と「疾病管理」の役割です。スキャンしたデータを「文書ファイル」に格納し、「疾病管理」で既往歴や休職期間を時系列で整理します。こうして情報を集約することで、メンタルフォローなどの長期的な対応でも、過去の事実に基づいた的確な判断ができるようになります。

(武田様)こうした個別フォローの一方で、受診勧奨などの集団アプローチには「一括登録」を活用しています。二次検査の対象者抽出から案内メールの送信までを一括で行い、その実施履歴をシステムに残すことで、誰に何を案内したかのログも含めた一元管理を実現しています。

(川崎様)日々蓄積されたデータは、最終的に「抽出集計」によって組織課題の可視化に繋がります。喫煙率や受診率など、必要なデータを部署ごとに細かく条件設定して抽出できるため、感覚ではなく定量的な根拠に基づいた分析が可能になります。

(中村様)この抽出機能は、労基署への報告や、年1回の国への実績報告でも威力を発揮しています。組織区分が非常に細かい弊社でも、複雑な条件での集計がシステム上で完結するため、手作業の負担が大幅に軽減されました。個人の支援履歴から組織の報告業務まで、すべての機能が「運営のサイクル」としてつながっています。

『広く深く』をテーマに、3つの柱で健康施策の再設計を進めています

今後の健康経営に向けて、どのような展望をお持ちでしょうか。

(西川様)現在、「広く深く」をテーマに再設計を進めている最中です。「ヘルスリテラシーの向上」「女性特有の健康課題への対応」「メンタルヘルス対策」の3つに注力しています。特にヘルスリテラシーの向上については、全員が関わる健康診断をベースに、社員自らが気づき、自律的な健康行動をとれるような仕掛けづくりを進めています。

(岡様)女性が多い弊社ならではの施策を、人事部と連携しながら打っていきたいですね。健診データをベースに将来の疾患リスクや健康年齢を分かりやすく伝えていきたいと考えています。メイクやファッションなど「見えるところ」のケア同様、「見えない体の中」の健康にもしっかりと興味を持ってもらい、健康を維持してほしいと考えています。

本日はご多忙の中、貴重なお話をありがとうございました。異動や外勤による物理的な距離、そして流動的な組織体制。その中で保健師の皆様が20年にわたりHealth Data Bankに入力し続けてこられた記録こそが「貴重な健康情報のバトン」だったのだと改めて感じました。Health Data Bankは単なるシステムを超え、健保と事業主、そして支援者と従業員をつなぐ「情報の架け橋」として、これからもワコールグループで働くすべての皆様が輝ける未来に伴走し続けてまいります。